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いまの暮らしに溶け込む、美しい鉄器。

岩清水久生さん空間鋳造

  • Text / tenote
2022.03.21
かねへん

独自の技法「焼き肌磨き」で、鉄の質感を追求

『空間鋳造』は、盛岡市出身の岩清水久生さんが2009年に設立した工房です。家業が鋳物業だった岩清水さんは、大学卒業後、デザイン会社勤務を経て、奥州市水沢で鋳物師の道に入りました。工房ではスタッフとともに、鉄瓶や急須を中心にオーナメント、茶托などの小物も制作しています。

古くから受け継がれる焼型製法による南部鉄瓶の美しさや価値を、現代に生まれた生型製法によって再現すべく、岩清水さんは独自の技術探求に取り組んできました。

鉄瓶の伝統的な制作工程の一つ「釜焼き」をヒントに、岩清水さんが考案した独自の技法として知られるのが、鋳込んだ鉄器の表面を削るように磨き上げたあと炭で焼き付ける「焼き肌磨き」です。鉄の自然な質感を感じさせる美しい「鋳肌」は、表面に薄い凹凸があり、その表情は一つひとつ異なります。

「透明感のある黒」を生み出した独創性。

また、「黒」の色合いにも、岩清水さんならではの思いがありました。 「一般的に鉄瓶の仕上げ工程では、漆を塗った上におはぐろを塗り、黒の着色・錆止めをします。でもこれだと、べったりした黒色になってしまう。もっと透明感のある黒色に仕上げたいと思いました」。

試行錯誤の末にたどり着いたのが、漆を使わず、タンニンとお茶を混ぜた「タンニン汁」を塗る技法。タンニンには錆止め効果もあります。実はこの「タンニン汁を使った着色」も、鉄瓶の伝統的な制作工程の一つ。子供の頃から「名作」といわれるような鉄瓶や茶釜が身近にあり、リスペクトしていたという岩清水さんならではの技法といえるでしょう。

これらの技法は、一つのモノと自身が対峙する岩清水さん個人の作品として生かされてきましたが、当然ながら、お客様に届ける商品づくりの新たな発想にもつながり、独自の質感を携えた商品が生み出されているのです。

「tenote」では、そうした商品の中でも人気の、シャンパン、Sayu、Egg、木蓋シリーズの鉄瓶や急須などをセレクトしてご紹介します。

「工芸好き」を魅了する白い鉄器『シャンパン(白金)』

鉄の自然な質感を求めて「黒」を追求していた岩清水さんですが、次第に着色への興味がわき始めます。そこでつくり出したのが、「茶」「朱」「青竹」など日本の伝統色を塗装したもの。そして行き着いたのが、「白」でした。

「Egg」型の急須、シャンパンカラー。茶こしもゴールド

きっかけは、デザイナー・原研哉氏の著書。そこに書かれていた「白という色は探してはいけない。白は雪や本の余白のように、感じる色なのだ」という言葉に刺激を受け、白の鉄器をつくろうと思い立ったのです。

「ただ黒い鉄器に白を塗装するだけでは美しく仕上がらない。それなら土台の色を変えてみようと、最初に金色または銀色を塗り、その上から白色を塗装したんです」。

しかも岩清水さんは、ここでも独特の技法を編み出します。塗装後に熱い湯で洗う「湯洗い」を行い、その後に布で磨いてグラデーションをつけることで、やわらかい表情に仕上げたのです。

ひとつひとつ、金色の出し方が変わる

こうして誕生した『白金(しろかね)』は、白色の下から金色または銀色が透けるように見える、モダンかつ上品な色合い。この着色を施した急須はあっという間に人気となり、その後『シャンパン』という名前に変わり、多くの「工芸好き」を魅了しています。

デザイン性の高い商品も

着色のほかに、岩清水さんが取り組んでいるのは、模様や柄を施した鉄器づくりです。その一つが、定番で「あられ模様」の鉄瓶。鉄瓶誕生の地である盛岡では、粘土と砂を固めて焼いた「焼型」を使って鉄瓶をつくりますが、水沢では大量生産に適した「生型」を使ってつくります。そのため、本来のようにあられの粒の先端を、どうしても三角形にできません。

砂で型をつくり溶けた鉄を流し込む生型製法。繊細なものは苦手だが、大量に制作できる面白さもある

「焼型」も使う岩清水さんですが、あえて「生型」でつくりたかったため、粒の先端を丸形にし、粒の数を減らして、独自の「あられ模様」を表現。伝統的なあられ模様とは別の魅力を備えた、モダンな鉄瓶『Sayu』に仕上がっています。

あられ模様を現代的に。鉄瓶「Sayu」

丸いフォルムが特徴の『Egg』シリーズは、卵のような柔らかい印象と安定感のある美しさが好評。日々使う楽しさを感じさせてくれます。そして、大小の鉄瓶、そして急須など、大きさや色合いなど、使う人の空間に合わせて選ぶ愉しみもあります。

『Egg』シリーズは鉄瓶と急須の2種類がある

また、直火で使わない急須には、蓋部分に県産山桜を使った木蓋バージョンも。胴部と蓋部分の調和が美しい人気のシリーズ。ぴたりとフィットした裏側の溝部は繊細なろくろ技術を必要としますが、矢巾町の木地師・堀秀慈郎さん(horimoku)が担当し、木目も美しく見事に仕上げています。空間鋳造という名の通り、使われる空間それぞれの中に溶け込む美しさをみせる岩清水さんの鉄器。日々の傍にぜひ置いてみませんか。

急須は直火にかけられないが、保温性が高く、内側はホーロー加工済み
紹介商品の詳細、ご購入はこちらから

岩清水久生さん(空間鋳造)の

南部鉄器

¥3,300〜(税込)

作り手

岩清水久生さん空間鋳造

盛岡市出身。盛岡市の鋳物工場に生まれ育つ。デザイナーから転身し、鉄器職人の道へ。2009年に独立し「空間鋳造」を設立。 2000 年ニューヨーク近代美術館 MOMA SHOP出品。2003年「日本クラフト展」優秀賞受賞。2004年「工芸都市高岡2004クラフトコンペ」グランプリ受賞。2016年、第266代ローマ法王(フランシスコ)への献上品製作。

〒023-0132 岩手県奥州市水沢羽田町字窪3-18
0197-23-8910
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